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​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

  • 執筆者の写真王丸典子

母は隠れサイコパス

更新日:2023年7月15日

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サイコパスとは

サイコパスという言葉を聞くとどのような人を想像しますか。連続殺人鬼、レイプ魔、誘拐犯、強盗、薬物常習者、このような極悪人を想像する人も多いかと思います。


特にハリウッド映画では、サイコパスを凶悪犯として描写することがよくありますが、実際のところすべてのサイコパスが、極悪というわけではありません。


そもそもサイコパスというのは精神医学の正式な名称ではなく、実際の診断名は、「反社会性パーソナリティ障害」といいます。なぜ人がサイコパスの特性を持のか。現代科学ではまだはっきりと原因を説明できるわけではありませんが、遺伝的要素と環境が大きくかかわるようです。


研究によるとアメリカの全体人口の約1.2%の人に、またビジネスで成功しているエグゼクティブ総人口の約3%に、サイコパスの傾向がみられるそうです。これはリスクや批判を恐れないというサイコパスの特性が、ビジネスを引っ張る資質として必要ということのようです。


そしてアメリカで収監されている犯罪者のサイコパス傾向は、もっと多いかと思いきや、全体の15%というのは意外です。


脳科学の分野ではサイコパス特性の研究が盛んにおこなわれています。サイコパス脳に関して様々な発見がありますが、主なものをご紹介しましょう。人の脳の中心部にある線条体という部署は、認知や運動、計画、意思決定、動機付け、報酬に対する認識などの機能があります。そしてサイコパス脳では線条体が過剰に活動していることが知られています。


また不安や恐怖などに反応する偏桃体という部位が、一般の人の脳より反応が低いことも分かっています。


著名な精神科医スコット・ペックは、長年に渡り囚人の診断を行いましたが、囚人達よりもむしろ一般人の中にこそ、サイコパス因子を持つ人が多く潜んでいると著書『平気でうそをつく人たち』の中で述べています。


では一般人の中に潜む、いわば隠れサイコパスにはどのような特徴があるのでしょうか。


隠れサイコパスの特徴


1. 表面的な魅力がある

隠れサイコパスは表面的魅力にあふれています。外見の魅力もさることながら、世間話のうまさやウィットにとんだ話術で、周りの人は自然に隠れサイコパスのファンになります。ところがこのような上辺の魅力の化けの皮が剥がれるのにあまり時間はかからないのも良くあることです。


2. 罪悪感の欠如

罪悪感の欠如は、隠れサイコパスの本性が現れる最初のサインかもしれません。周りの人の感情を傷つけることを意に介さないばかりか、相手を非難し自分こそが被害者のような態度にでます。


3. 傲慢である

隠れサイコパスは尊大な自尊心があり、自分を社会一般のルールを超えた存在であると信じています。また、自身の可能性について常軌を逸した考えを持つので、することすべてにおいて、自分の決断が最高だと常に確信しています。


4. ビッグリスクを好む

隠れサイコパスは大きなリスクを冒すことに躊躇しません。全員が違法行為に手を染めているわけではありませんが、しばしば欺瞞を伴う策略を計画しますが、その不正行為は通常よく組織化されています。隠れサイコパスは非常に知的な傾向があるため、優秀な詐欺師になる可能性を秘めています。


5. 他人の心を操る

隠れサイコパスは真の感情を持つことが出来ません。ところが他人の感情を真似ることは得意です。例えば一般的に不幸な経験とみなされることが起きると、自然に悲しみにくれる姿を演じます。しかしそれは心から悲しいわけではなく、悲しみを表すことで周りの人の心を操り、それが自分の利益になると確信しているからです。


隠れサイコパスは、他人の感情を操作するのが本当に巧です。巧妙かつ効果的な方法で他人を持ち上げ、自分のニーズを満たすために、罪悪感を持っているようなふりをしたり、同情を買うような演技をいといません。


みちるさんの現状

18歳のみちるさんは、小学校から高校までの女子一貫校の、高校3年生です。この学校は歴史のあるいわゆるお嬢様学校で、校則も厳しく、また都内有数の進学校でもあります。


みちるさんは少し陰りのある美少女で、真摯に話をする様子や言葉遣い、礼儀正しさは、年齢を遥かに超えているような印象です。


7歳の時に父親が病気で他界し、兄弟のないみちるさんは、母親と二人暮らしです。そしてみちるさんの相談というのが、母親に関することでした。


みちるさんと心理カウンセリング

最初の面談でみちるさんは、静かな微笑みを浮かべて座っていました。しかしその表情には、なぜか何かをあきらめた人に見られるような、空虚なものも漂っていました。


みちる 7歳で父が病死してからとても貧乏になって、その頃すでに今の私立校に通っていたのですが、授業料が払えるような状態ではなかったんです。母は父の残したアパレル関係の会社をやっていましたが、すぐに潰れてしまい、それ以降は男の人の援助で暮らすようになりました。


父が病気になって入院したころから、もう男の人がいたんだと思います。そのころから家にあまり帰ってこなくなって、家にいる時の母の態度はとても冷たくて、私が邪魔なんだということがはっきり分かりました。


カウンセラー その頃7歳だと言われましたが、身の回りのことや食事はどうしていたんですか。


みちる 自分でやりました。お金はテーブルの上に置いてくれていたので、コンビニでお弁当を買ったり、簡単なものは作ったりしていました。


カウンセラー みちるさん小さいのに、ひとりで大変でしたね。頑張ってきたんですね。たったひとりで生活して学校に行くのは大変だったと思いますが、勉強はどうでしたか。


みちる 頼るものは勉強しかないと思って、ずっと頑張ってきたので成績は良い方だと思います。今は国立大学の医学部を目指していて、将来は精神科医になりたいと思っています。


カウンセラー お母さんは学校の参観日や行事には無関心だったのでしょうか。


みちる それが母はものすごく世間体を気にするので、いつも張り切って学校にやってきました。美人だし話もとっても面白いので、学校のPTAでも、いつも人気者です。人前では私のことをとても可愛がっているような振る舞いをするので、みんな騙されてしまうんです。母にとって私は単なる装飾品のようなものなんです。


カウンセラー お母さんは表面的にとても魅力的な人なんですね。でもみちるさんに対しては、母親らしいことをしてくれないわけですね。


みちる これまで一番傷ついたのが、14歳の時です。その頃母は男の人に多分捨てられて、収入が無くなってしまったんだと思います。すると私に売春するように仕向けてきたんです。学校に知られるとまずいので、知り合いのつてでお金持ちの相手をするようなことです。多分母も同じことをしていたと思います。


カウンセラー 14歳で売春?みちるさんつらかったでしょうね。


みちる この世の終わりのような気になりました。私が泣いて嫌だと言うと、母はものすごく口がうまいし演技力もすごいので、私が納得するまで、やさしく説得したり、しくしく泣いたりして見せました。


カウンセラー みちるさん、それで実際に売春を受け入れましたか。


みちる はい、お金がなくて今の学校が行けなくなると言われたのが決定打でした。今の学校は先生も友達も大好きで、将来母から独立するためには、良い大学に行かなくてはいけないとずっと思っていたので・・・


カウンセラー 14歳で大変な決断をしたんですね。売春は今も続いていますか。


みちる 14歳の時は1年位させられました。母はすごく悪賢いので、私が妊娠したり病気になったり、学校にしられたりしないよう、いつも神経を使っていました。相手の男の人たちは母にも私にもたくさんのお金をくれました。

その後母に大金持ちの男の人が出来て、私も売春しなくてよくなったんですが・・・

どうもその男の人が最近亡くなったみたいで、また母が私に売春をしろと言ってきたんです。


カウンセラー それはひどい!みちるさんどうしますか。


みちる 将来精神科医になりたいと前に言いましたが、私は精神科医や心理学者が書いた本をたくさん読みます。

その中に出てきたサイコパスっていうのが母だと思いました。特に凶悪犯罪に手を染めるわけではない、隠れサイコパスっていうのが母のことだと思います。

どこかにサイコパスからは逃げるしかない、彼らは絶対改心しないとありました。そうしたい気持ちもすごくあるのですが、母を見捨てることにならないでしょうか。母はすごく口がうまいので、私が母の言いなりになるように、言葉巧みに常に説得してくるんです。


カウンセラー みちるさん、あなたはもう18歳、世間では大人として扱われる年齢になりました。自分の人生は自分の意思で決めていいんですよ。自分を大切に、自分を守りましょうね。私はできるだけ協力しますよ。


みちる ありがとうございます。大学入試センター試験まであと4か月なので、何とか勉強に集中したいんです。


カウンセラー あと4か月とはいえ、今の学校の高い授業料を卒業まで払えますか。


みちる 実は去年父方の祖父が亡くなって、私にお金を残してくれたんです。父方の親戚は母の本性を知っているので、母には内緒で叔母が連絡をくれました。18歳になった時に母の知らない口座を作って、そこに2000万円入っています。


カウンセラー 経済的な心配は当面ないのですね。ではそのお金を使って授業料を払ったり、進学の準備をしますか。


みちる それがそんなことをしたら、母にすぐ知られてしまいます。それと母もお金に困っているのに、私は助けなくていいんでしょうか。


カウンセラー もしみちるさんがお母さんを助けたら、どうなるでしょう。


みちる 同じことがまた繰り返し続くと思います。母の仕掛ける罠から逃れることが出来なくなると思います。


カウンセラー それはどうですか。


みちる 絶対に嫌です。でも、母を見捨てることだけが少し気になりますが・・・


カウンセラー お気持ちはよく分かります。でもよく考えてみると、お母さんはみちるさんを大事に守ってくれたことはありませんでしたね。

だからと言ってお母さんに対して同じことをしろと言うのでは決してありません。ただみちるさんがしっかりと自分の道を歩みだすまで、距離を持つ必要があると思います。

大学入学まで誰かみちるさんをサポートしてくれる人はありませんか。


みちる 最近は母のことで疎遠になってましたが、遺産のことで連絡をくれた父方の叔母はきっと助けてくれると思います。


カウンセラー みちるさんの貯金を守らなくてはいけないので、弁護士か税理士、あるいは公証人などに相談して、きちんと文書化しておくと良いでしょう。


おわりに

その後すぐにお母さんの家を出て、みちるさんは叔母さん所に身を寄せ、学校へは叔母さんの運転で通いました。学校の信頼できる先生にも相談をして、卒業までの3カ月半のサポートをしてもらうことが出来ました。おばさんの知り合いの弁護士に相談して、自分の権利を守る方法を教わりました。


その後みちるさんは、地方の大学の医学部に無事入学して、将来の夢に向かって歩み始めました。最後の面談でみちるさんは、

「やはり母のことは心配だけど、私が母に利用されないような強い大人になるまで、しばらく母には自分の居場所を教えないつもりです」という言葉を残しました。


【参考資料】



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