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​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

  • 執筆者の写真王丸典子

絶体絶命!



その日私はロングビーチの西パロスバルデスに住む親友を訪ね、とても楽しい一日を過ごしました。ゆっくり夕食をごちそうになり、夜の9時半過ぎに別れを告げて、サンディエゴの自宅へ向かいました。距離にして約160キロ、2時間半のドライブです。


日曜日の夜9時半過ぎのインターステート405号線は空いていて、快適にドライブを続けていました。その時の愛車はインフィニティG20、すでに数年乗っていましたが、とても信頼のおける車でした。


ところが走り出して20分ほどしたところで、突然車が何だかフワ~っと横揺れしたなと思ったら、急にダッシュボードの表示パネル全体が、ピカピカと忙しく点滅し始めたのです。場所はまだやっとロングビーチを抜けたあたり、何がなんだかわかりませんが、車の調子がおかしくなったことは明らかでした。


フリーウェイを降りて助けを求めることを考えましたが、日曜日の夜10時過ぎ、修理屋はすべて閉まっています。それにいつ止まってしまうか分からない車で、知らないフリーウェイ出口で降りたくないというのもありました。おまけに携帯は後部座席に置いたハンドバッグの中、運転中だと取ることが出来ません。


どうしたら良いか分からないまま心臓はバクバク、ものすごい恐怖心と共にゆっくりゆっくり走り続けて、フリーウェイは405号線からインターステート5号線に移って行きました。


その間コスタメサやアーバインなどの街をいくつも通り抜けながら、「あともう少しあともう少し」と自分に言って聞かせました。


こころはパニック状態でありながら、どこか冷静な自分がいて「御巣鷹山で墜落したJAL機に乗ってた人たちは、こんなもんじゃなかったよ」などと頭に浮かんでくるから不思議です。



オレンジ郡を抜けてサンディエゴ郡に入る所に、キャンプ・ペンデルトンというアメリカ海兵隊の広大な基地があります。




ここは常に軍事訓練が行われているような場所で、時々日本の自衛隊もアメリカ軍と合同訓練を行うそうです。戦地のようなしつらえですから、夜は真っ暗で何も見えません。


インターステート5号線はその基地沿いの海岸線を走るのです。普段天気の良い時などは、ここからの太平洋の眺めは最高で、これぞ南カリフォルニア!といった感じです。しかし今は漆黒の闇。


しかもその夜は急に濃霧が出てきて、1メートル程しか前方が見えなくなりました。おまけに時間と共に車量がますます減ってきて、もしここで突然車が止まってしまったら、一体私はどうなるのだろうと思うと、全身恐怖で包まれました。


するとまた「ここでエイリアンに連れて行かれても、誰も気づいてくれないかもしれない」などというバカげた思考が浮かんでくるのです。


恐怖心てあまりにも大きくなると、頭がボーッとしてくることにも初めて気づきました。気を失いそうというと大げさかもしれませんが、極度の興奮状態です。


そして普段信仰心とは程遠い私ですが、この時ほど真剣に全身全霊をかけて祈ったことはありません。誰に対して祈ったかって?そんなこと知ったことじゃありません。オロオロと運転しながら「どうぞお願いです。私をお守りください‼」と、大声で叫び続けました。


恐怖映画を地で行くような3時間の運転の末、息もからがらなんとか自分の家のあるフリーウェイ出口までたどり着くことが出来ました。そして車は出口を出て数メートル走ったところで、プシューと言うような音をたて完全に動かなくなりました。


あとで調べてもらったところ、電気系統回路に重大な不具合が生じていて、2時間以上走るなど、到底無理な状態だったと聞いて呆然としました。


それにしてもあんなに祈り続けたことって、あとにも先にもあの時だけです。あのような状態で家に一番近い出口まで走るとは!念ずれば通ずは本当のことかもしれません。

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