​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

自分はいったいどんな人?


「なんだかいつも演技しているみたいで…」健太さんはため息交じりにそう言いました。大手企業で法務の仕事についているこの男性は、一流大学の法学部出身のエリートです。


母方の親族の多くが法曹界にいて、法学部入学を目指して小さい頃から両親の敷いたレールの上を、懸命に走り抜けた感があるそうです。


「法学部に行きたかったのかどうかも、自分ではよく分からないんです。」健太さんはもともと従順な性格だったので、親の意向に沿いベストをつくしてきました。でもふと、僕は何が本当はしたかったのか。たまにこの思いが胸をよぎります。


本当は何が好きなのか、何がしたいのか。これを考えだしたら、収拾がつかなくなるような気がして。常に親をはじめ周りが望むことを、毎日懸命に演じている。でももしかすると、本心はそんなことちっともやりたくないのかもしれない。」

健太さんが学校でも仕事でも、常に周りが認めるような高い成果を上げてきたのは事実です。


「だけど心がこもってないんです。周りの意に沿うためにしているだけで、まるで操り人形のような気がします。」 


この男性のように顔色をうかがう癖を持つ人は、他人の言動や動向を知るために多大なエネルギーを使っています。カウンセリングでは、これまでの経験や出来事に照らし合わせながら、自分の気持ちを見直すことにしました。


目標は自分を知ることを通して自己を確立し、また、今後どのように生きていきたいかを明らかにすることです。そのために自分史を作成することと、そして感情チャートの記入を行いました。 


① 簡単な自分史作成

自分史というと大げさですが、これまでどのようなことがあったかを、左の表のように時系列でリストにします。


書いていると、親に言われて嫌々始めた出来事など思い出し、感情があふれ出るかもしれません。


しかしこの際重要なことは、客観的な視点に立って行うことです。


② 感情チャート作成

二つ目は感情チャートの作成です。自分の気持ちを封印して生活してきた人は、自分の気持ちにあまり敏感ではありません。また自分が何を好み、何を嫌うかもはっきりしない場合があります。


感情チャートの作成を通して、自分の希望や夢、そして嗜好などを認識しやすくなります。


これまでの経験で本当に楽しかったことは何か、満足したことは何か、悲しかったことや、残念だったことは何かを、右にあるようなチャートに書き込みます。


チャートの0は一番悲しかったことや、残念だったこと。また10は一番うれしかったことや満足したことで、それを縦線の右側に書いていきます。


こうしているとこれは本当に自分自身が感じていた事か、という疑問が出るかもしれません。それでもかまいません。


あまり深く考えすぎないように、心に浮かんだものを書き込みます。また余白に忘れていた感情などもメモ書きするとよいでしょう。


簡単な自分史と感情チャートを記入してみることは、これまで自分がどのように生きてきたかを知るうえで、とても参考になります。


健太さんの場合、親の操り人形のような生活だったという認識が、この作業を行うことで少し変わりました。


確かに子供のころは、随分自分の意思を無視されたような出来事もありました。


しかし中には自分自身も心から楽しめたと思う経験もしていて、特にアメリカのホームステイや、一人暮らしを始めた時の解放感は百パーセント自分自身の感情だと気づきました。


初めは親の意向に沿って選んだ法律に関する仕事も、感情チャートを何度も見直しているうちに、やはりこれは自分が続けていきたい仕事だと思うようになったようです。


そして自分を知る作業を通して、健太さんは自分が操り人形だという意識が薄らぐのを感じました。


自分史・感情チャート記入で自分を知り、自己の確立につながる




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