​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

時が過ぎるのは何よりの薬です


ゆり子さんの夫が肺がんで亡くなってから8年になります。


二人の子供もすでに結婚して独立し、70歳になるゆり子さんは家族で住んでいたマンションを大改造して、ゆったりと一人で暮らしています。


パートの仕事も夫が病気になって以来辞め、今は年金生活です。


子育て時代から一緒の同年代の友人がマンションにはたくさんいて、一人になった今でも退屈することはほとんどありません。


毎週のように運動もするし、年に何回かは旅行にも行きます。

つい先日もスペイン旅行のツアーに一人で参加して、アンダルシア地方を満喫してきました。


時が解決してくれた辛さ

しかし夫が診断から3か月でアッという間に亡くなった時は、本当につらく心細い思いで毎日暮らしました。


その時期には主治医から処方された安定剤を、お守りのように持ち歩いていました。


のむことはありませんでしたが、いつでものめると思うと安心でした。


そのつらさをどのように乗り越えたのか聞くと、

本当に時が過ぎるというのは、何よりの薬ですねと、微笑ながら答えてくれました。


シニアとしての気持ち

最近気が楽になったことの一つに、経済的な安心があそうです。


夫の死後、一人暮らしをするための十分な資金があるかどうかとても心配しました。


しかし今では毎月の収入と支出がはっきりしたので、そんなに贅沢しなければ十分暮らせることが分かりました。


それによって不安感は大幅に減少しました。


シニアになるということはメリットとデメリットがあると、ゆり子さんは言います。


社会的に背負うような大きな責任が何もないので、本当に気が楽ですね。


人間関係だって我慢せず、気の合わない人とは付き合う必要はありません。


ここまでくると他人にどう思われるかより、自分がいかに心地良いかが重要だと考えるようになりました。


一方責任がないということは、必要とされていないことでもあり、その寂しさを感じることはあります。


自分にとってのシニアライフは、自由と孤独が背中合わせであると、つくづく思うのです。


頭の回転は以前より遅くなったかもしれませんが、片付けるべき問題は慌てず時間をかければ、いまでも必ず解決できると思っています。


しかし体の衰えや病気を考えるとやはり心配です。


夫の最後がとても苦しそうだったので、自分の死に対する漠然とした不安はあります。



これからのシニアライフで、もし一つ望みが叶うなら、ピアノを買って心行くまで家で練習してみたいのです。


しかし今のマンション暮らしでは、それは叶いません。


それに絶対に必要でもない大きな買い物をして、自分の死後子供たちに迷惑をかけたくないとも思うのです。


そのように話すゆり子さんの表情は、少し寂しそうでした。


ところがそれから6カ月、コロナ禍で巣ごもりの日々が続き、ゆり子さんはヘッドフォンで音が聞ける消音付きピアノの購入を決意。


「あと20年も生きなきゃいけないとしたら、まだ少しは楽しまなくちゃね」こう話すゆり子さんは、とても晴れやかな表情でした。。



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プロフィール

米国・カリフォルニア・スクール・オブ・プロフェッショナル・サイコロジーで、心理学修士号及び心理学博士号取得。カリフォルニア州公認サイコロジスト。アメリカ心理学会正会員。アメリカ軍契約サイコロジスト。

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