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​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

  • 執筆者の写真王丸典子

"R"の発音ちがうよ!


7歳の白人の男の子ブランドンは、#吃音 の問題がありました。毎週 #スピーチセラピスト から矯正訓練を受けていたのですが、吃音は精神的な影響も大きいので #心理カウンセリング で気持ちを安定させることが求められました。


ブランドンは目がクリクリの愛くるしい表情で、どもりながらも人懐っこく話しかけてきます。言いたいことがいっぱいあるようで、大きな目を見開きながら一生懸命です。遊びながらのカウンセリング(#プレイセラピー)を続けていくうちに、家庭内でブランドンの置かれている状況が分かってきました。


両親共とても若く20代そこそこです。家庭は豊かではなく、その上ブランドンを頭に4人の子供がいます。両親は気持ちに余裕がないのでしょう。長男のブランドンに対してイライラと頻繁に小言を言うようです。お父さんの口癖が「何グズグズ言ってるんだ、早くしゃべれよ!」これじゃ吃音になっても無理ありません。


ブランドンの天真爛漫な明るい性格のお陰もあり、プレイセラピーは良好に進んでいきました。小さい弟や妹がいてあまり両親に甘えられなかったのか、カウンセリング中に体を寄せてきます。お絵かきの時には私の膝の上に座ろうとします。


大人のカウンセリングの場合は、例外を除いてクライアントの体に触れないという倫理規定があるので、私はブランドンが膝にのってくるのを良い事なのかどうか少し迷いました。でもブランドンの場合はきっとこれも必要だろうと思い、特に何も言いませんでした。


ある時ブランドンから「ちょっとRの発音違うと思うよ!」と指摘がありました。ごもっとも! 私も日本人によくある癖で気をつけていないとRとLを混同します。


「Look! R~~~~. No! Look at my tongue! 見て!ア~~~~ルルル。違うよ!僕の舌を見て!」 大きく口をあけながら、自分の口に手を入れて説明します。


次は私にやってみろと言います。笑いが止まらないながらも 「R~~....」 とやっていると、「フ~ン、どうして出来ないんだろうねぇ」と言って、ブランドンは手を私の口の中に入れて矯正してくれようとします。きっとスピーチセラピストから受ける指導を、私にしてくれたのだと思います。


カウンセリングって人の暗い話ばかり聞いて気持ちが滅入りませんかと、時々質問されますが、こんな楽しくて懐かしい経験もいっぱいあるんですよ。

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