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​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

  • 執筆者の写真王丸典子

『霊長類ヒト科動物図鑑』におもう


私は30年日本を留守にしていました。そして八か月前に日本に帰り、日本の良さや美しさに改めて喜びを感じる今日この頃です。


もちろん日本には上げればきりが無いほどの問題が山積しているでしょう。しかし私の目から見ると、日本という国は問題をはるかに超える良さや美しさを持っていると感じるのです。


こんな私ですが時々ぼんやりとした「#取り残された感」を持つことがあります。生活の中で感ずるこの感覚はどこから来るのか考えてみるのですが、なかなかはっきりとはわかりませんでした。


そして今日台風が来ました。私の住む千葉県に上陸し、我が家の回りも豪雨と強風が吹き荒れています。窓から外の様子を眺めていると、もう何十年も前に読んだ短編小説を思い出しました。


それは四十年近く前に台湾の航空機事故で亡くなった、向田邦子 の『霊長類ヒト科動物図鑑』という本にある「傷だらけの茄子」という短編です。


この短編は昭和の時代に住む家族が、台風を前にどんな心持だったか、またどのように備えたかが美しい日本語で書かれています。向田邦子の手に掛かると「台風」という日常的な事象まで珠玉の作品と化してしまいます。


向田邦子の作品は昭和庶民 の日常生活が、まるで美しいタペストリーのように表現されていて、ディープな昭和に触れることが出来るのです。

そして私は昭和が終わる数年前に渡米して、平成の日本には一度も住んだことが無かったのです。


アッ、これだと思いました。時々感じる「取り残された感」は生活の中にある平成の日本に、私が良く対応出来ない時に起こるのです。つまり私はいまだ昭和バージョンの日本人だったということです。


平成も28年になり先日天皇陛下が退位のご意向を示唆するお言葉を述べられました。お言葉を拝聴するにつけ、自分は何と長きに渡り自国を留守にしていたのかと実感しました。


浦島太郎も感じたかもしれない「取り残された感」、これからも時々感ずることでしょうね。


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