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​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

  • 執筆者の写真王丸典子

エッ、うつですか? すっかり安心しました


25歳の女性が初めて 心理カウンセリング に訪れた時、とても不安そうな表情を浮かべていました。


前から通っていた大学にここ6か月程どうしても行くことが出来なくなり、家で寝てばかりいるようになりました。そして食事量は減っていないのに、2-3か月の間に体重も5キロ以上減っていました。


たとえ学校に行けても、歩いている途中で行き慣れたクラスの場所が分からなくなったり、スーパーで何を買うか決められず、立ち尽くしてしまうと言います。


以前は大学の授業を取ることにやりがいと喜びを感じていたのに、今ではすっかりやる気を失ってしまいました。


話をしているとこの女性の誠実な人柄や、人との コミュニケーション があまりうまく取れない性格であることが分かってきました。


子供のころから溺愛してくれた父親を中学生の時に亡くし、頑固で自分の価値観を押し付けてくる母親に対して高校生の頃から反発の連続でした。


やっと母の呪縛から逃れてカリフォルニアの大学に入学したのに、卒業間近になって学校に行けなくなってしまいとてもがっかりしています。しかしどうしても体が動かないのです。


また自分に何が起きているのか分からず、とても混乱している様子でした。将来に対しての不安が大きく、まるで真っ暗な穴の中から出てこれないような気持ちだと言います。


初回のアセスメントの結果、この人の状態は大ウツ病性障害と診断しました。

そして女性に結果と今後の治療予定を話したところ、


「エッ、うつ ですか。有難うございます。すっかり安心しました。これからよろしくお願いします」


と、言うのでなぜだろうと思い聞いてみると、ここ数か月自分はとても重い遺伝性の精神疾患に罹っているに違いないと思っていたのだそうです。そのことが不安で不安で、夜も寝られなかったと言います。


「やっと自分の状態が把握出来て、治療プランも聞いたので、気持ちが大分楽になりました」と笑みを浮かべています。


「大うつは深刻な状態に進む場合もありますよ」と説明すると

「ええ、でもそうなる前に治療を受けることにしたので、本当に良かったです」

と、これまでとは全く違う明るい表情を浮かべていました。


ここで少し安心出来たことが、カウンセリングを効果的に進めていく大きなきっかけになりました。


この女性のこんがらがった心を解きほぐすことを目的とした、じっくり話を聞くカウンセリングを、週に一回一年ほど続けました。その間精神科医から処方された抗うつ剤、ウェルビュートリン(Bupropion)も服用しました。


カウンセリング開始から半年くらい経ったころから学校に行く気持ちが次第に戻り、一学期休学しただけで無事卒業することが出来ました。


女性は一年後には症状がほとんどなくなりましたが、再発防止のためその後もひと月に一度のカウンセリングを続けて心の健康維持につとめました。



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