• 渡部典子

本当の満足感はどこから


ある30代の男性が結婚するかどうかで迷っていました。恋人のことはとても好きなのですが、今の自由な生活を放棄して夫婦としての生活が本当にしたいのかどうかわかりません。まして子供でも生まれることになれば、自分の生活は全く変わってしまうと考えると恐怖すら感じます。


ユダヤ系オーストリア人の #ビクトール・フランクル は、精神医療の祖フロイトも認めた才能あふれる精神科医でした。ところがナチスの弾圧のため、まず年老いた両親が収容所に送られる日が近づき、自分も一緒に収容所で両親を支えるかどうかで非常に逡巡しました。


行くとすれば結婚したばかりの若い妻も一緒です。この時フランクルはアメリカ移住ビザの発行を受けたばかりで、両親に別れを告げアメリカに渡れば、精神医療の研究も自由に出来るはずでした。


フランクルは自分がどちらを選択すべきか「天からの答え」を得たいと教会で祈り続けました。そしてある日家に帰ってみると、机の上に大理石のかけらが置いてありました。それはナチスの爆撃によって壊された近くの礼拝堂から父親が持ち帰ったものでした。


良く見るとそこには十戒の聖句が刻まれていました。その中に両親を敬い大切にするという文言がありました。フランクルはこれを天からの声と思い、両親と共に収容所に行くことを決意しました。


収容所でフランクルは収容者たちに #心理カウンセリング をするのを日課としていました。そこで発見したことは、「生きることの意味」をはっきりと認識している収容者は、病気や拷問、自殺願望に負けず生き延びる確率が高かったのです。


例えば自分の年若い子供の成長を見届けたいと思っている人や、研究途中の科学者などが、自分の生きる意味や責任をはっきり認識すると、逆境に耐え忍ぶ力が大きく増加することが分かりました。


フランクルは「#生きることの意味」を見出すことは幸福のみを追求するよりも、人は深い #満足感 を得ると述べています。シンプルに説明すると、幸せの追求は往々にして何かを 受け取る行為 "take" であるのに対して、生きる意味を見出し責任を果たすことは 与える行為 "give" です。


例えば子育て真っ最中の人は、子育てに費やす時間よりも仕事や趣味に費やす時間の方がより幸福感をおぼえます。しかしながら子育てを通して自分の生きることの意味を認識し、人生に対しより深い満足感を持つようになるのです。


ナチス収容所で命を落とすことなく、フランクルは戦後アメリカに渡りロゴセラピー(意味中心療法)を確立しました。これは人が生きる意味を見出すことを通して精神の健康を目指す療法です。


結婚を迷っていた30代の男性は、仕事や趣味ばかりを追求する現在の生活は、きっと何十年も続けられないだろうと思うようになりました。これだけを続けていたら「多分そのうちにむなしくなる時が来るような気がします」。男性は結婚を通して自分の生きる意味を追求する決意をしました。


フランクルの Man's Search for Meaning  邦題『#夜と霧』は1991年にアメリカでもっとも影響を与えた本の一冊に選ばれました。 


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