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​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

  • 執筆者の写真王丸典子

7歳少女とナイス・グッドバイ

更新日:2021年3月1日


その7歳の女の子は #小児喘息 を患っていました。いつ発作が起こるか分からないため、学校に行くことが困難で、市教育委員会の自宅学習プログラムに参加しています。


自宅で勉強するのはいつ起きるか分からない発作に備えるには良いのですが、同級生との交流が全くない生活でその子は心の元気も失いがちでした。


#心理カウンセリング では一緒に絵を描いたり、クラフト作りをしたりの #プレイセラピー を通して、女の子の気持ちが上向くように手助けしました。心が安定すると喘息発作の緩和にも少なからず良い影響が出ます。


プレイセラピーをしながら、その子は友達に会えない寂しさや、お父さんとお母さんの仲が悪くて心配だということや、5歳の弟がうるさくてうんざりだと言ったことを饒舌に話します。私をカウンセラーというよりは齢の離れた友達と思っているようで、気になることはなんでも話してくれる良い関係を築くことが出来ました。


しかし当時私はインターンだったため、一定の訓練期間が終わるとそのカウンセリング・センターを離れることになっていました。あと2か月でセンターを離れる頃になると、受け持っているクライアントさんに事情を説明して、徐々にカウンセリングを終了していかなくてはなりません。そしてその中にはその女の子もいました。


経験不足のインターンだった私には、その子にどのように別れを切り出してよいか全く見当がつきませんでした。すると指導教官が、「ナイス・グッドバイ」を教えてあげなさいと言います。


意味が良く把握出来ない私に、教官は「別れは人生の中で避けては通れないこと、そしてポジティブな別れもあるのだと経験させてあげる。これがその子に対する最後の務めだ」と指導してくれました。


私が別れについて話した時、その女の子はちょっとハッとした表情でした。そして人生に別れはつきものと言う私の説明に「そうだね。パッツィにもグッドバイを言ったわ」と納得したようでした。パッツイというのは以前女の子が飼っていた犬です。


どのようにしたら私とあなたの別れが素晴らしいものになるかしらという私の問いかけに、女の子は大きな大きなグッドバイ・カードを一緒に作ろうと提案してきました。


そのカードの片側には絵を描いたり折り紙をはったりしました。そして裏側にはこれまで一緒にしたことのリストや、お互いの感謝の気持ちを書きました。


そして最後の日がやってきました。出来上がったカードを一緒に見たり読んだりした後、女の子は私に小さな包みをくれました。中には可愛いピンクのバニーが入っていて「あなたにこれを持ってて欲しいのよ。そしたらこれを見るたびにあなたはきっと私を思い出してくれるわ」女の子はちょっと照れた表情でそう言いました。


私の肩をギュウッと抱きしめた後、その子は「バイ」と手を振って笑顔でカウンセリング・ルームを出ていきました。その手には大きなグッドバイ・カードがありました。


あれから何年たったでしょう。もうすっかり大人になっているはずの女の子はお元気かしらと、ピンクのバニーを見るたびに思います。

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