俯瞰で見ると世界が変わるよ


人の悩みというのは尽きないものですね。


心理セラピストとしてクライアントさんと接するたびに、この思いは深くなります。本当に悩みを抱え込むのは辛いことです。


それならば、どのようにしたら悩みから自分を解放できるのでしょう。

悩みを解消する方法はいろいろありますが、物事を俯瞰し、フェアシンキングを行うというのもその中の一つです。

フェアシンキング法とは、物事を俯瞰し客観的に観察することを通して、従来の物の見方や考え方を見直す方法です。この場合のフェアとは、身びいきせずに状況を見るということであり、それが問題解決につながります。



俯瞰に見ることを通して物事を冷静に、そして客観的に観察することです。なぜそれが重要かというと、問題は冷静に客観的に見るだけで、解決することがあるからです。物事を俯瞰することが、フェアシンキングの大切な出発地点なのです。



フェアシンキングを使ったカウンセリング面談


今日のカウンセリング面談のクライアントさんは、ユミコ(仮名)さんという三十代の女性です。アメリカ人の旦那さんとの間に、五歳の息子がいます。息子が保育園に入った後、ユミコさんは職場復帰し、それ以来仕事と子育てを両立しています。


ユミコさんの普段の面談の内容は、国際結婚や子育ての難しさに関してなのですが、今日はどうやら職場や自分のキャリアについて話をしたいようです。


「もう本当にいまの仕事がイヤでイヤでたまらないんですよ。

無能な上司にバカな同僚。わけの分からんことを言い続ける取引先。

そしてしばしばモンスター化する顧客たち。あ~ぁ」


と、絶叫気味のユミコさんは大興奮でまくしたてます。


「自分が本当にやりたいことは、こんなカスタマー・サービスじゃないんです。もっと何かクリエーティブなことがしたいんです。マネジメントでも良いわ。本当にこんなに嫌なのに、働き続けなきゃいけないなんて地獄です。」


小鼻に汗をかきながら、ユミコさんの訴えは続きます。


「クリエーティブな仕事って、どんな仕事でしょう。何かイメージありますか。」

私はユミコさんの弾丸トークの隙をねらってたずねてみました。 


「いえね、具体的なことは何もないんですけど、とにかく今の仕事がバカバカしくて大っ嫌いなんです。だって将来性がみじんも感じられない気がして。」


「そんなに嫌だとしたら、辞めるという選択肢もあるでしょうか……」

と、少し揺さぶりをかける私に対して、今度は自分がこの仕事を辞めることができない理由を、ユミコさんは次々に並べたて始めました。


私は興奮気味のユミコさんに、こう話しかけます。

「ユミコさん、とても嫌な仕事のようですけど、やめることができない事情もあるんですね。それならいまのお仕事を受け入れられるように、自分が納得できると良いですね。」


「えーっ、納得するーっ。そんなの無理ですよ。まぁ、絶対に辞められないってわけでもありませんし……」


「辞める選択もあるのはよかったです。でも辞める決断をする前に、一緒によく考えてみましょう。


ユミコさんの場合のように、状況を変えるのが難しいとしたら、自分自身が無理のない程度に少し変わる。多分それしか方法はないでしょうね。」


「ふ~ん。」と言いながら、ユミコさんは半信半疑の表情です。


「でもね、今のままだと、これからもずっと苦しくて腹立たしいですよね。それじゃ辛すぎます。今の状況を別の方角から見てみると、少し気持ちが楽になりますから一緒にやってみましょう。」


「はぁ、では具体的にはどうしたら良いんでしょう。


「嫌な状況を納得して受け入れるには、それを俯瞰で見るといいですよ。

俯瞰で見るとは、状況を上から見下ろすということです。


そうするといま見えることの裏側も見えて、考え方のバランスがとても良くな

ります。そして次第に気持ちが楽になっていきますよ。」


「なんだか良く分からないけど…。」と、困惑気味のユミコさん。


「じゃ、いまユミコさんが見えていることを、一緒にリストにしてみましょう。」

  • 無能な上司

  • バカな同僚

  • わけの分からんことを言う取引先

  • モンスター・カスタマー

「次に状況を俯瞰で見てみましょう。さっきは嫌なことをリストにしましたね。今度はその反対側を見ますよ。それにはいまのお仕事の良い点を書いてみるとできますよ。」

  • 家から近い

  • 子供が熱を出したときに休める

  • 週何回かは家から仕事することができる

  • 給料はわるくない

  • そのうちにマネジメント職に昇格の可能性もある

「こう書いてみると、いまのお仕事には、結構良いところもあるみたいですね。ユミコさんどう思いますか?」


「そう言えばそうですねぇ。」

とはいうものの、ユミコさんはまだ完全には納得できていない様子です。


フェアシンキングは納得して受け入れることを可能にする



「はっきり言いますね。多分どこに行っても完璧な職場はないでしょうね。無能な上司やモンスター・カスタマーには、新しい職場でも遭遇する可能性があります。」


「それは分かっているんですけどね。」


「じゃ、それをまず納得したぞって、声に出して言ってみてください。」


「完璧な職場はない。新しい職場でも無能な上司やモンスター・カスタマー

はいるかもしれない。そのことを納得したぞ。」


「次に、今の職場の良いところを声に出して言ってみましょう。」


「いまの職場の良いところは、家から近い。子供が熱を出したときに休める。週何回かは家から仕事ができる。給料はわるくない。将来マネジメント職に就けるかもしれない。」


「今の職場には良いところがいろいろある。これを納得たぞと言ってください。」


「今の職場には良い点がいろいろあることを納得したぞ」


「本当に辞めようと思えば辞められる。でもいまの職場にとどまっているのは、

自分の意思だと、納得して。」


「今の職場にとどまっているのは自分の意思であり、本当に辞めたければいつでも辞められることを納得したぞ。」


「自分の意思でとどまっている職場の良いところも見て、状況を受け入れるぞと声に出して言ってみてください。」


「いまの職場には自分の意思でとどまっている。だから良いところも見て受け

入れるぞ。」


「そう、たいへん良く出来ました。今の気分はどうですか?ユミコさん。」


「確かに少し気持ちが落ち着きました。ありがとうございます。でも、これで月曜日にまた会社に行ったら、怒りが爆発するかもしれませんが。」


「はい、それが普通です。その時は今一緒にやったプロセスを、一人でやってください。腹が立ったらやる、腹が立ったらやるを繰り返してくださいね。

私が以前会社に勤めていた頃は、こんな時はトイレに飛び込んで、繰り返しやっていましたよ。そうするとネガティブ感情に反応する偏桃体という脳の部分の活動が、

だんだん穏やかになっていきます。そして気持ちが楽になってくるんですよ。」


「分かりました。やってみます。本当にありがとうございました。」 


「このプロセスをひとりでやる時に、気持ちが伴わなくても良いんですよ。これは筋トレするのと一緒です。筋トレするときいつも楽しいって思わないですね。


嫌だな、辛いなって思うときもあるでしょう。それでもだんだん筋肉がついてきますよね。こころの筋トレも同じです。腹がたっていてもやり続ければ、心の筋肉が強化されますよ。できれば先ほどやった時のように、小声で良いので声に出して行ってくださいね。」


【面談後記】

人間にはその人特有の考え方や物の見方があります。そしてあらゆる出来事を経験として解釈する時に基になるのが、その人の考え方や物の見方です。 


例えばAさんとBさんの二人が一緒に同じ体験をしても、物の見方や考え方が異なると、経験として記憶される内容には違いがでてきます。


しかしこれはAさんあるいはBさんが、間違っているということではありません。個人の考え方や感じ方は人それぞれであり、万人共通のものではないということです。


物の見方や考え方は、親の躾やその人の性格、また環境や学校教育を通して培われ、固定観念として定着していきます。


例えば人間関係の悩みの場合、相手を変えようと躍起(やっき)になる人が時々いますが、これは気づかぬうちに自分の固定観念を、相手に押しつけていると言えるのです。


人が悩みごとをかかえた時には、もの事を自分の固定観念で解釈して、腹を立てたり苦しんだり、堂々巡りを繰り返します。


このような堂々巡りにはまってしまった時の解決法は、職場を変えることでも、相手の態度を変えることでもなく、自分の見方や考え方そのものを、見直す以外にありません。


そうでないと同じような問題が、たとえ新しい職場においても、あるいは新しい相手であったとしても、再び起こる可能性が高いのです。


それはまるでどこに行っても、問題があなたを追いかけてくるような状態です。 


物事を俯瞰に見るということは、自分の固定観念に切り込みを入れることであり、負の堂々巡りからの脱出を可能にします。



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