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​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

  • 執筆者の写真王丸典子

スティーブ氏男を上げる


財務部のマネージャー、スティーブさんは50代の白人男性です。

有能で温厚な人柄は、皆が一目置くような存在でした。

ところがスティーブさんには、ちょっとした弱点がありました。

それは彼の頭髪に関することです。

日本に比べてアメリカでは、髪の毛が薄いことで笑われることは少ないように感じます。


しかしアメリカ人でさえスティーブさんのヘアスタイルを、時々陰で笑い話にしていました。

なぜならそれは、このイラストのように片側の髪の毛を長く伸ばし、それを頭の上に渦巻状にグルグルと乗せていたのです。

スティーブさんのヘアが乱れたところを見たことはありませんが、強風でも吹けばとても気の毒な状態になったことでしょう。


アメリカ人の率直さに仰天する

知らない人にスティーブさんの説明をする場合、特徴ある頭髪の人というとすぐに伝わりました。

ところがある日スティーブさんは、片方の長い髪を潔く切り落として、上の眼鏡の男性のようなスタイルになりました。

日本だったらほとんどの人が、スティーブさんの新ヘアスタイルを見て見ぬふりをしたのではないでしょうか。

ところが率直なアメリカ人はそんなスティーブさんを放っておきません。

寄ってたかって、


「うぁ、スティーブ!あなたの勇気に敬意を表するわ」だの

「あなたもともとハンサムなんだから、これで顔の美しさが引き立つわ」、

「いやぁ、決意するのは大変だったでしょう」だのと、

ありとあらゆることを言っています。


それに対してスティーブさんも少しも悪びれた風もなく、

「いやぁ、家族のサポートがあって決心できたよ」などと答えて、ひとしきり彼の頭髪に関して大ディスカッションを繰り広げています。


それを見た私は、ビックリ仰天!

当時はまだアメリカ生活も日が浅い頃でしたので、アメリカ人はなんと率直なことかとつくづく認識したのでした。

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