自分に対する責め癖を直して
更新日:2023年7月1日
みちるさんは広告代理店に勤務する三十歳になったばかりの女性です。大学卒業以来この会社に勤めていますが、労働時間の長い過酷な職場だといいます。
そしてみちるさんの気持ちが沈むようになったのは、半年ほど前にあるプロジェクトのチームリーダーになったころからです。
みちるさんの言葉に耳を傾けていると、ある口癖に気が付きました。それは自分を責める否定的な言葉が多いことです。
「能力のない私が、そもそもチームリーダーになってしまったことが間違いなんです。こんなこと出来るわけないし、絶対に失敗するにきまってます」
みちるさんはとても厳しい、褒めることのないお母さんに育てられた結果、自分の価値をみとめることが難しい大人になったようです。多くの日本人がみちるさんと同じように、自分を見つめた時にまず悪いところに目が行きます。
このパターンを無意識に繰り返すことで、中には自分には良いところなど全然ないような気持ちになってしまう人もいます。すると自信も喪失して、内心自分を責めるようになるわけです。
否定的な言葉に関する科学研究
日本では昔から言葉に宿る不思議な力のことを言霊(ことだま)と呼び、長く人々に信じられてきました。
現代人の中には非科学的と否定する人もあるかと思いますが、科学研究に照らし合わせると、言霊はまんざら嘘ではないようです。
精神神経免疫学研究によると、「だめだ」「たりない」「出来ない」「失敗するにちがいない」などの否定的言葉を継続して使用すると、心身の疲弊を促す物質が体内で分泌されるのだそうです。
脳神経学者のキャンディス・パート(Molecules of Emotion著者)は、長年にわたり脳の伝達物質と感情に関する研究を行いました。
パートの研究によると、思考や感情によって、神経伝達物質の分泌が促されることが明らかになりました。神経伝達物質の分泌は、人が感じる幸福感や満足感、気分、そして身体機能に至るまで影響を及ぼすと結論づけています。
またノーマン・ドイジは、著書The Brain That Changes Itselfの中
「我々が何を考えるかによって、脳そのものの機能や構造に変化が起きる」と述べています。
つまり自分に対するネガティブな思考や感情は、その感情が継続するような、また身体機能の低下に繋がるような変化が脳内で起きるということになります。
責め癖改善トレーニング
否定的な言葉に関する科学研究を説明して、みちるさんに責め癖改善のトレーニングを行ってもらうことにしました。
① 自分を責めている瞬間を認識する
「全くいつもダメなんだから」
「きっと失敗するに違いない」
「ほんとに勇気のない奴だ」
「全くだらしのない人間だ」などの言葉がでた瞬間に気づくよう意識を向ける
② 上向きの言葉を言ってみる
自分を責める言葉を言っている瞬間に気づけるようになったら
「これまではダメだったけど今回は違うかも」
「とりあえずやってみよう」
「事と次第によっては勇気を持てる時もある」
「自分もきちんとやれる場合もある」
など少し上向きの言葉を小声で自分に言ってみる。声に出して言うのが大事です。
③ 前出②の言葉を自分に言える理由を考える
自分の長所を思いだして、上向きの言葉を自分自身に言える理由を考える。すると自分の能力を再認識できる。
チームのメンバーからの信頼
真面目
全力を尽くす
コミュニケーション能力
長年培った癖はすぐには消えません。しかし二カ月も継続しているうちに、みちるさんの気持ちが少し楽になってきました。そして一年後には話し言葉から責め癖は随分消えていました。
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