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​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

  • 執筆者の写真王丸典子

物にも気持ちがあるのかな


動物も物質も分子レベルは同じだから、物質と言えども多少の感情はあるという意見があります。


真偽のほどはよくわかりませんが、もしかしたらという経験はこれまでもありました。最もよく覚えているのは、愛車を売る時に起こりました。


写真の車はかつて私がロサンゼルスで長いこと乗っていた日産アルティマです。日本ではブルーバードという名前だったと思います。


この車は当時アメリカではエコノミーカーの中ではとても人気があり、よく走っているのを見かけました。

ドアの取っ手や内装にちょっとしたおしゃれ心がありました。また自分で買った初めての新車ということもあり、忙しかった日々を共にする大好きな相棒でした。


確か8-9年乗ったと思いますが、その間故障は全くありませんでした。


特に問題はなかったのですが、車社会のアメリカでは信頼できる車に乗るのがとても重要です。周りの勧めもあり、新車に替えることにして、アルティマ君を中古車のネットサイトで売りに出しました。


紆余曲折ののち、新しい買い手がいよいよ車を見に来る朝。

試しにエンジンをかけてみるとなんと、エンジンがかからないのです。

こんなことは初めてですが、どうやらバッテリーが上がってしまったようです。

なんだかハッとして、私は車のいたるところを「ありがとう」と言いながら撫で始めました。これまでの労をねぎらう気持ちで、タイヤにお神酒も振りました。


なんでこんなことをしたのか分かりません。でも車が別れを惜しんでいるように思えたのです。しばらく車を撫でてから、もう一度エンジンをかけてみました。そうしたら今度はいつも通りかかりました。


その後お父さんに連れられて車を取りに来た高校生の男の子にとって、アルティマ君は免許を取得後人生初の自分の車です。お父さんもその男の子も良い感じの人達で、少しホッとしました。


英語の口語表現に "Lived its life" というのがあります。直訳すると「命を終えた」という意味ですが、長いこと使ったものが壊れて買い替えるような時によく使います。


車が男の子の運転で去っていく後姿を見送った後、少し涙がでました。アルティマ君が命を終えるまで付き合わなかったことを少し後悔していました。





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