父の命日・不思議なできごと
大正八年生まれの父が亡くなったのは、いまからちょうど30年前、平成元年の7月のことでした。
そして毎年命日の時期になると、父が亡くなった直後に起きた不思議な出来事を思いだします。
戦地で体を壊し復員後70歳で亡くなるまで、入院や手術を何度となく繰り返す人生でした。
それでも62歳で退職するまで病いを抱えながら会社勤めをし、妻と二人の娘を養ってくれました。
思い返すと父の人生は、病とつき合う法を極める旅だったような気がします。
意気地なしの私など、風邪をひいたくらいでワーワー家族に訴えるのに、父はほとんど愚痴も文句も言いません。
体が許す範囲の趣味を楽しみながら、毎日ひっそり病と付き合っている感がありました。
父のお葬式もすみ地方から来ていた親戚も帰って、家族だけになりました。
そうすると寂しさが一層心にしみます。
そんな時ある人から電話がかかってきました。
Yさんというその男性は、父の小学校の同級生だそうです。
そしてその人は、
「昔T君と通った東京下町の小学校を今日訪ねる機会があり、卒業生の連絡先を見つけたんです。その中に仲良しにしてたT君の名前を偶然目にして、懐かしくて電話しました」
というではありませんか。
電話で応対した妹は驚愕しながら、
「父とは卒業後もお付き合いされていたのでしょうか」とたずねると、
「いや、卒業以来60年ぶりですね」というのです。
Yさんに父が亡くなり2日前にお葬式を済ませたばかりだと伝えると、呆然とされていたそうです。
あとで妹から聞いた母と私も、言葉がありません。
これは一体何だったのでしょう。
父は少しいたずら心のある人だったので、もしかしたらこんなこと仕組んで、私たちに「まだすぐそばにいるよ」と伝えたかったのでしょうか。
それともみ霊となった父が、子供時代の友達のYさんを訪ね、名簿を見つけるよう仕向けたのでしょうか。
偶然と言ってしまえばそれまでですが、家族にとってはなんとも不思議な、少し嬉しいような経験でした。
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