心を癒す良書『人生でほんとうに大切なこと』
私達皆が影響を受けているコロナ禍、非常事態宣言、そして外出自粛。
不便なこともたくさんあります。
生活に困窮している人、医療現場で治療に奮闘する人、自粛により以前とは違う生活を強いられる人々など。
ニュースでは厳しくつらい現状が、刻々と日々伝えられています。
このような状況は、少なからず誰の心にも多少の変化を及ぼします。
不便に対し怒る人、様々な事を批判し続ける人、生活に絶望している人もいます。
一方外出を自粛することから、思いがけず家族と過ごす時間が増えて、少しほっとする気持ちが芽生えた人もあるようです。
最近よく耳にするのが、「これを機に何かが変わるのでは」という声です。
もしかしたらこの現状は、私たちのこれまでの生活スタイルや、考え方に変化をもたらすきっかけとなるのかもしれません。
これから「何をたいせつにして生きるか」を考える、絶好の機会なのかもしれないのです。
がん患者家族に向き合う清水 研 先生
私が『人生でほんとうに大切なこと』に出会ったのは、1年半ほど前のことです。
心理セラピストの仕事というのは試行錯誤の連続で、ややもすれば自己批判や自己嫌悪ばかりに陥りがちです。
そんな時本書に出会い、清水先生の患者さんやそのご家族と対話される様子に接し、心が洗われるような気持ちになりました。
がん宣告を受けた人と今の日本は共通点がある
私もがんで父を亡くした経験がありますが、がん宣告を受けた人やその家族は、現実を受け止めがたくとてもつらい思いをします。
そのような人達が逃げることのできない現実を受け止めて、そこからどのように生きるかを探ることは容易なことではありません。
清水先生はそのような人々と向き合い、人々自身がきびしい現実と対峙しながら道を切り開く支えとなります。
本書をもう一度手に取りながら、コロナ禍における日本の人々の心は、清水先生の患者さんの心に通じるものがあると強く思いました。
読む人の心も癒す
本書は、文筆家、稲垣麻由美さんの卓越した文章力により、悲しみに打ちひしがれた人々の心が癒されていく様子がひしひしと伝わってきます。
そしてそれは読む人の心も、同時に癒していくのです。
逃げ場のないコロナの状況下、『人生でほんとうに大切なこと』は、人々が現実を受け入れ、何を大切に生きるか考える指針となるのではないでしょうか。
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