小さな嘘は自分を傷つける
S代さんは人当たりの良いやさしい人柄で、職場においても有能で後輩たちからも慕われています。
しかし穏やかそうな外見とは裏腹に心の中では、常に他の人達の評価を気にしています。
本当はとても嫌なことでも、どう思われるかが気になるあまり、みんなが引き受けないような事まで率先して行います。
日常的にそのようなことが続き、最近では休みの日は疲れ果てて、寝ているだけで終わってしまうような状態です。
しかしこんな生活はどこかおかしいと思いながらも、S代さんはどこが変なのか全く分かりませんでした。
子供時代の経験が大きく影響
S代さんの両親はとても仲が悪く、子供時代は喧嘩の絶えない家庭でした。
そして父親は絶えずS代さんを否定するような言動で、今思い返してもつらい子供時代だったと思います。
三歳下の弟がいますが、弟をかわいがる父親の態度は明らかに違っていて、繊細でおとなしい性格だったS代さんは、親の顔色を見ながら成長していきました。
このような子供時代の影響はそのまま大人の生活にも反映して、人の顔色をうかがいながら汲々と生活しています。
本心が言えずウソをつく
そして何より本人が最近気にしているのが、本心を素直に言えないためにつくウソに関することです。
例えば先日も気の進まない夕食会に誘われ、しぶしぶ参加を承諾しました。しかし当日になると、やはりどうしても行く気になりません。
そこで病気ということにして、約束時間の二時間前に断りました。
とにかく朝から気が重くて、夕方まで悶々とした挙句のキャンセルです。
そのころには本当にひどい頭痛も起きて、その日一日が台無しになりました。
何より辛いのは、そんな自分に嫌気がさして、「私って信用できないヤツ」という思いです。
以前から社会の役に立ちたいとか、人としてきちんとしたいと思うような志の高いS代さんです。
ところが子供のころからの不安感によって、志と行動に大きな隔たりのあることを本人も認識して、最近とみにモヤモヤしています。
そしてS代さんはウソをついて他人を傷つけないようにすればするほど、自分自身を深く傷つけてしまうと次第に気づいていきました。
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