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​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

  • 執筆者の写真王丸典子

孤独の脅威


二十八歳の女性編集者みつきさんが担当している雑誌は、都会での豊かなライフスタイルや高級雑貨などを紹介する月刊誌です。


仕事はとてもやりがいを感じていたのですが、長く続くコロナ禍で最近は以前のような取材ができません。また取材以外は常に会社の編集部で仕事をしていたのに、今は特別なことがない限り自宅でのリモートワークになりました。


環境的な変化だけではなく、最近自分の心が少しも晴れず、疲労感が抜けないことも不安で仕方がありません。


みつき 何しろ孤独なんです。私は一人暮らしですから、自宅で仕事をしていると誰とも会わない日もあるし。孤独だという気持ちに取りつかれると、いてもたってもいられないような気持ちになります。ちょっとしたパニックです。

私   孤独感や寂しさに心が押しつぶされそうになるのは本当につらいですね。いつ頃からしばしばそのような気持ちになりましたか。


小学校入学以前にみつきさんの両親は離婚し、十歳の時に母は継父と再婚しました。継父にもみつきさんより年長の女の子が二人いて、子供の頃は随分義理の姉達からいじめられたそうです。


みつきさんの孤独感はその頃からありました。継父や義理の娘たちに遠慮がちな生みの母に対しても、自分の味方だという意識を持つことができませんでした。家庭内でみつきさんの居場所はなかったのです。


このような環境で育ったみつきさんは、人に心を開くことが難しく友人を作るのも苦手でした。

しかし編集者の職に就いて以来、自分の居場所と生きる目的が見つかったような気がして、やっと人並みの生活を手に入れることができたとホッとしました。ところが一年以上続くコロナ禍で、その平穏がかなり揺らいでいます。


   孤独感からパニックになりそうな時は、どのような思いが頭をよぎりますか。

みつき とにかく怖くて、何かが襲ってくるような。自分の力では耐え難い何かです。

   もしその何かに負けてしまったら、起こりうる最悪のことは何でしょう。失うものは何でしょう、何か思いつきますか。

みつき 何だろう… 精神病を患うとか、死かな。失うものは健康とか、命ですかね。でも普段死に対する恐怖がそんなにあるわけではないんですけど。

   孤独感から健康が損なわれることは確かにありますね。

みつき 誰も助けてくれない…一人ぼっち、とてつもなくつらく悲しい気持ちにもなります。

   以前同じような気持ちになったことはありますか。

みつき あっ、子供の頃です。いつもそうでした。継父の家族と暮らすようになってから。そうか、私はあの頃のような生活になることが怖いんです。なんとかそれを避けようと躍起になって、パニックになるんですね。


みつきさんは孤独に対する脅威の出所が、子供時代のつらい生活だと気づきました。


   パニックを引き起こす原因に気づいたのはとても有効なことです。原因が分かるだけでも症状が軽減することがありますが、あまり変わらない場合もあります。そこで気持ちを安定させて恐怖心を和らげることを見つけて行ってみましょう。


ジョージ・ワシントン大学のリチャード・シトウィックは、コロナ禍の孤独感軽減法として、歩くことや歌うことが良いと述べています。歩いたり歌ったりすると、自律神経が安定し不安感や抑うつ感を抑えることが可能です。


   一日のうち何時ごろに一番孤独感に襲われますか。

みつき 夕方です。

   もしスケジュール的に可能であれは、夕方になる前の三時半ころに散歩に出ると気持ちが楽になるかもしれませんが、やってみますか。

みつき 歩くのは嫌いではないですが、出歩いても良いでしょうか。

   都市封鎖をしているヨーロッパでも運動のための散歩は認められています。しっかり予防対策をして、2-30分歩いてみましょう。その時小声で歌いながら歩くと、効果がより上がる可能性があります。

みつき 子供の頃からつらい時はいつも歌ってました。分かりました、やってみます。

この時から歌いながら歩くことが、みつきさんの日課になりました。歩いているだけだとつらいことも思い出しますが、歌を歌うことで気がまぎれるそうです。


ひと月ほど歌いながら歩くことを続けたところ、みつきさんの孤独に対する恐怖心は少しずつ和らいでいきました。




★ 孤独の脅威は歌いながら歩くことで軽減できる





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