​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

ベンツ買ってあげましょう


サンディエゴ市のとあるカウンセリングセンターで働いていた時です。

そのセンターでは一人のクライアントに対し、複数の治療担当者が割り当てられます。


精神科医、看護師、サイコロジスト(心理カウンセラー)や理学療法士がチームになり、互いにコミュニケーションをとりながらクライアントを治療するわけです。


そのセンターで、ある時私は大金持ちのクライアントの担当になりました。中年のその男性は中東の国からの移民で、一代でビジネスを築き上げ大成功を収めました。しかし長年に渡る無理がたたって、心身のバランスを崩していました。


しばらく通ってくるうちに男性は大分状態が良くなり、初めてセンターを訪れた時とは別人のような様相です。その頃になると男性は、センターでのクライアントに対する治療をしばしば褒めるようになりました。


そしてある日、いつものように自律神経安定のトレーニングが終わった時、腰の抜けそうなお申し出がありました。

いつも本当にありがとう。あなたにお礼をしたいと常々思っていたけれど、メルセデスなどどうでしょう。失礼かもしれないけれど、私の気持ちとして受け取ってくれませんか。

今も昔もいたって庶民派の私は、心の中で叫びました。

いまメルセデスって言った⁉ メルセデスってベンツのことでしょ!

ウッソー‼

そしてもちろん丁重に断ろうとする私に男性はこう言います。


いや、すぐに断らないでください。次回のアポの時に返事をもらえればいいですから。少しは考えてみて下さい。

心理カウンセラーとして働いていると、クライアントから頂き物をすることはあります。しかしカリフォルニアの倫理規定はとても厳しくて、高価なものをいただけば免許を失うことさえあるのです。


倫理規定がどうであれ、個人的にもとてもそのような高価な品はいただくことはできません。そして次回の面談の時に丁重にお断りしました。


すると男性は、

そう言うと思いましたよ。あなたがそう言うであろうことを想定して私も考えました。かわりにこのセンターに寄付金を贈ることにしました。

後で知ったことですが、この男性は自分の担当チームメンバ―全員にメルセデスを勧めていたそうです。


それを知るまで妄想癖のある私は、

この中東の独身男性にそのうち結婚でも申し込まれたらどうしよう

と、思ったりしていたのですが、全くの的外れ。


男性は本当にセンターの治療に感謝していたのです。


その後弁護士立会いの下、男性からセンターに日本円で数億円の寄付がありました。それにしても本当のお金持ちというのは、桁が全然違いますね。


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