フェアシンキングで自信をつける
マサルさんはある日、部長から前日に提出したプレゼン資料に関し、とても厳しい意見を言われました。このようなことがあると、自己否定の思いにとらわれて、資料の見直しに集中することができません。
自分の行動を客観的に見直すのは有用なことですが、自己否定ばかりに偏ってしまうと、生きることが苦しくなります。
早く部長の意見を尊重した資料に仕上げなければなりません。ところが「俺って本当にダメだな」、「直したところでまた絶対に失敗する」などの思考が繰り返し頭に浮かび、それに伴って不安感や緊張感で心身ともにがんじがらめの状態になりました。
そこで自己否定するパターンを見直し、自分を助ける思考を脳に学習させることを目的とした、フェアシンキングというエクササイズを行いました。フェアシンキングは、欧米の心理治療の現場で最も使われている、認知行動療法を簡素化したものです。
このエクササイズは自動的に繰り返し浮かぶ自己否定の思考を、より自分を助ける思考に置き換えることにより、自己肯定感を高める効果があります。どのようにするか順を追ってご説明しましょう。
状況を俯瞰し自分を助ける思考を考える
まず状況とこれまでの思考パターンを整理します。
① プレゼン資料に関して部長にダメ出しされた
② 自己否定の思考が何度も頭に浮かび、資料作りに集中できない
③ すると不安感や緊張感などの感情があふれ出ます
以上がマサルさんの既存のパターンです。
次にこの状況下で自分を助けるフレーズを思い浮かべます。この項の最後のページにある表を参考にしてください。
④ マサルさんは次の二つのフレーズを思い浮かべました。
「部長の意見をよく理解して作り直そう」
「これも将来につながる勉強だ」
脳に自分を助ける思考を学習させる
さらにその中で一番しっくりくるフレーズを選びます。マサルさんは「これも将来につながる勉強だ」というのを選びました。そして不安感がでるたびにそのフレーズを、繰り返し自分に言って聞かせます。
こんなことで効果があるのかと思う方もいらっしゃるかもしれません。ところがフレーズを繰り返すエクササイズを行っていると、脳は次第に新しい思考を学習するということが最近の脳科学研究(可塑性研究)で明らかになりました。
新しい神経ネットワークができる
「これも将来につながる勉強だ」という新しいフレーズを、繰り返し自分自身に言って聞かせると、脳内では徐々に以前なかった神経細胞と、神経ネットワークが形成されていきます。(MRIなどで目視可能)
また学習を繰り返せば繰り返すほど、新しい神経回路は太くなります。反対に、既存の神経ネットワークは痩せて、衰退していくことも認識されています。
その結果、情緒が安定して自己肯定感向上や自信につながります。そして心の抵抗力が増しストレスの緩和や、抑うつ感、不安感の軽減が起こります。
フェアシンキングのエクササイズは、日常生活の中の様々な状況や事柄に照らし合わせて行うことができます。マサルさんもいろいろな出来事に応用してみました。するとマサルさんの自己肯定感や自信は、数カ月の間にかなり向上しました。
★フェアシンキング・エクササイズで自己否定の思考が消え自信がつく
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