​小さなミラクル通信

守秘義務尊重のため内容は著者の経験に基づいた創作です

バレンタインデー:愛を語るクライアント


バレンタインデーですね。


この時期になると必ず20年ほど前のバレンタインデーを思い出します。


その頃私はロサンゼルス空港近くのカウンセリング・センターでインターンを始めました。

学校のクラスを取りながら、トレーニングの一環として少しずつ実際のクライアントを持たされるわけです。


そしてその年のバレンタインデーに、人生初のクライアントと面談することになりました。

人生初というのは大体において緊張を伴うものですが、この時ほど緊張したことはいまだかつてありません。


きっと私は顔面蒼白だったのでしょう。

クライアントの到着を待つ間先輩カウンセラーたちから、


「大丈夫よ。なんとかなるわ」

「この世の終わりじゃないよ」

「始まったら、あっという間に終わるから」

などの言葉をかけられました。


カウンセリングはクライアントが主役です。

ですから私が緊張しすぎて面談にならないほど情けないことはありません。


いよいよ時間がきました。


面談室に入ると私と同じくらい緊張しているクライアントがソファに座っていました。

そして私が席に着くやいなや、息せき切ったように話し始めました。


それはクライアントのある人に対する情熱的な恋心でした。

どんなにその人のことを思っているか でもその人は自分の親友の恋人で その人のことを思い続けて 夜も寝られないしご飯ものどを通らない これじゃ仕事もクビになりかねない

クライアントのあまりの情熱に圧倒され、私は自分の緊張をすっかり忘れ話に聞き入りました。


そのクライアントとはその後数カ月に渡り面談しましたが、その頃の私は心理カウンセラーとしてはあまりにも未熟でした。


何をどう話したのか。


クライアントの心が軽くなるサポートを少しはできたのか。

詳細ははるか霧の彼方です。


毎年バレンタインデーの時期になるとその日のことが思い出され、そのクライアントはどうされているのかとしばし考えます。

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プロフィール

米国・カリフォルニア・スクール・オブ・プロフェッショナル・サイコロジーで、心理学修士号及び心理学博士号取得。カリフォルニア州公認サイコロジスト。アメリカ心理学会正会員。アメリカ軍契約サイコロジスト。

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