いただいたのは「真心」
自分があまり好きでない物をいただくことありますね。
そんな時どのような気持ちになるでしょうか。
若かりし頃、そのような時に私は「あら、こんなのもらっちゃった。どうしよう」と不遜にも思っていました。
当時日本はバブル全盛期、物質主義が横行していた時代です。
ちょうどその頃、私は家族の仕事の関係でアメリカに移り住み、ロサンゼルス市の運営する語学学校に通いだしました。
そしてある年のクリスマスのことです。
世界中から来ていた生徒が、それぞれお国自慢の料理を持ち寄って、ポットラックパーティーを開きました。
宴もたけなわな時、ある生徒がクラスの先生にプレゼントを手渡しました。
その生徒は南米のとても貧しい国から来ていた人で、仕事を2つ掛け持ちしながら家族を養っている女性でした。
プレゼントを受け取った先生は「アメリカの良心」のような人で、皆から尊敬されていました。
パーティーの最後にそれぞれが受け取ったプレゼントを開きました。
先生が女性からのプレゼントを開けてみると、中にはとても質の悪そうな手袋が入っていました。
皆と一緒にその光景を見ながら、私は内心「先生、あの手袋どうするんだろう」と、思いました。
すると私の隣にいた生徒が、
「こんな安物、先生するわけないよね」と、率直に言うではありませんか。
送り主の女性は仕事の都合ですでに帰っていたのですが、先生がなんと答えるか私は耳をそばだてました。
すると先生はとても穏やかな笑顔で、
「プレゼントをいただくのは、物をもらうのではなくて、送り主の真心をいただくことよ。あの女性は大切な時間とお金を使って、私のことを思いながら選んでくれたんですもの」と答えました。
この先生の一言は、私のそれまでの考え方に強烈な一撃を与えました。
あれから30年以上の時が経ちました。
今でも頂き物をするたびに、あの先生の穏やかな口調と美しい笑顔を思い出します。
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